フランスで見つけた素敵なもの~キャンドル~
前回の『ある日、12月のウィーンにて(後編)』で、クリスマスのアドベントキャンドルについて少し触れたが、今回は日常的に使われているキャンドルについてお話したい。
フランス滞在中、実にさまざまな色や形のキャンドルを見かけた。香りがつけられたものもあり、女性だけでなく男性も手に取って鼻を近づけている様子を目にした。
いくつかの家庭でホームステイさせていただいたとき、どの家にもキャンドルがあり、昼夜問わず使用されていた。間接照明が一般的で、日本ほど室内が明るくないことが要因の一つだろう。しかし日が高いうちから使用していたり、電気機器を導入していないところをみると、照明を補うためというよりは、雰囲気や気分を演出するためだったように思う。
ステイ先では鏡台の前、広間の窓際、玄関、食卓、浴室など、ところどころに各家庭の好みが垣間見えた。残り少なくなってくると新しいものを継ぎ足して使うこともあるようで、独特の形や模様が出来上がっていた。ニコの家のバスルームでは、何本かの溶けたキャンドルが15cmほどの山のような塊となっていた。彼は燭台を使用していなかったものだから、蝋がくっついてバスタブと一体化してしまい、元から装飾されていたオブジェであるかのようになっていた。
初めての留学先だったオーベルニュ地方のとあるカフェでは、オーナーのマダムが、タバコを吸う人のテーブルにいつもキャンドルを添えていた。香りはしていなかったので、煙を紛らわせるための配慮だったのだと思う。不思議なもので、キャンドルが灯されているというだけで、煙や臭いまでもあまり気にならなかった。
香水文化が発展したフランスにおいて、フレグランスメーカーが発売するキャンドルは人気が高いようだ。フランスでは気軽に香水を贈り合ったりするので、今の時期、こういったキャンドルをプレゼントに選ぶ人もいる。日本だと香水をつけなかったり香りが苦手な人もいたりするから、贈り物としてはちょっと躊躇するかも知れない。
外ではお気に入りの香水を身にまとい、颯爽と立ち振る舞う。家ではキャンドルの香りと灯りに包まれてリラックスする。キャンドルの炎を眺めていると、常に揺らいでいるのに、何となくほっとする。山吹や萱草の色味を帯び、微かに揺らめく炎。立ち上る煙は、薄氷のごとき繊細な絹糸が空気で紡がれるかのように形を成したかと思うと、香だけを残し消えてゆく。はかなさを感じつつ、心がじんわりと落ち着いてくる。
仕事の疲れを癒したい、気持ちを整えたいというとき、すぐに取り入れたらいいのだが、日々の生活でキャンドルを灯すような時間を過ごしているかと言えば、なかなかそうはいかない。引火への注意や蝋の後処理など、ついつい億劫になってしまうので、思い立ったときに限られてしまうことがほとんどだ。温泉などではすぐにのぼせてしまい、湯舟に長くつかる習慣がない私がバスタイムで使用したのは、お風呂を沸かしたあとで停電になったときくらいだったし。
フランスでは飾っておくだけでもワクワクするようなキャンドルを見つけたので、日常使いとしては、火は灯さず目の保養にしている。ガラス皿に乗せたり、水に浮かべたり、お香のように立ててみたり。香りが苦手な人へも、装飾品としてプレゼントできそうだ。
今年のクリスマスは、どれか灯してみようか。ちょっと気分が変わるかも知れない。
左上:レモンのものは香り付き。ホルダーもレモン。縦に連なっているので立てて使用。
左下:ライムの香りがするもの。
中上:花びらのものは水に浮かせて使用。
中央:お花や植物のもの。香りはしません。
中右:一輪や花束の形になっていて、立てて使用。香りなし。
右上:お花やイチゴ。こちらも香りなし。イチゴは粒ごとに引火線があるけれど、このまま飾っておくのがベストな気が……。