忘れていたもの

久し振りに実家へ帰り、探し物をしていたときのこと。フランスで使っていた二つ折りの財布を見つけた。うわ~、懐かしい!と手に取ったとき、ちらりと中が見え、ショップカードやレシートらしきものが入っていることが分かった。あとでゆっくり確かめよう、と自宅に持ち帰ることにして、そのときはきちんと確認しなかった。

この財布以外にも、フランス滞在時に使用していた諸々があったので、併せて持ち帰ってきた。職業身分証明書や、バス・電車の定期券には当時の写真が貼られている。まだ若いな~とか、こんなメイクしてたんだ、と過ぎた年月を感じる。と同時に、こういうものに使用される自分の写真はどこかぎこちなく、つくづく嫌になる。インターン高校に通うためバスを使用することになった際、ステイ先のRDP家のマダムが
「この写真を見ると、うちの子もずいぶん大きくなったわ、と感慨深い」
と、息子の定期券を見せてくれた。当時の彼は高校生だが、写真は小学生頃のものだった。どうやら、最初に登録したときの写真をずっと使用するらしい。今まで証明書に貼付してきたほぼ全ての写真に嫌悪感を持っている私にとって、同じ写真が継続して使われるなんて、考えただけでもぞっとする(変わったところで、恐らくまた嫌気がさすのでしょうが……)!


財布には、テレカルト(フランスのテレフォンカード)やコスメショップのポイントカード、いくつかのショップカードが入っていた。テレカルトにはプティとグランドがあり、私は割安になるグランドを購入していたものだ。今回見つけたものにはプティも含まれている。テレカルトのデザインは様々で、いかにも商業的なものもあれば、芸術的なものもある。日本のようにショーケースで提示されているわけではなく、大抵の場合、サイズを伝えると店主が選んだものを否応なく渡される(サイズごとに1種類しか扱っていないのかも知れない)。運が良ければ、種類を見せて選ばせてくれることもある。確かこのときはいくつか見せてもらい、ライオンキングのデザインが素敵だったので、敢えてプティを選んだのだった。ユトリロっぽい絵のテレカルト(素人目線なので、全然違う作風だったとしてもご容赦いただきたい)は、パリのタバコ屋の女性店主さんが、拙いフランス語の私に優しくにっこり笑いかけながら渡してくれたものだ。宿を決めずに日本から出てきて、知り合いのフランス女性に電話するため寄ったときのことだった。女性店主さんの笑顔に心が和んだのも束の間、このあと知り合いの女性から宿泊を断られ、途方に暮れることになるのだが。
イヴ・ロシェはインターン期間中にお世話になったコスメショップだ。肌が弱いと伝えたらサンプルをどっさりくれたし、何か購入したらいつもオマケ(ミニネイルとか)をくれたし、お値段も手頃だった。石畳の多いフランスで歩き疲れたときなど、イヴ・ロシェのラヴェンダーフットジェルは鎮痛・リラックス効果があってすっきりしたものだ。近年日本にも上陸したと耳にしたが、フランス価格のままだろうか?


定宿のカードは、ふうふう言いながら上った階段の写真を載せている。ショコラティエD&Gのカードは二つ折りで、開くと聖人カレンダーになっている。レストランのカードは少し汚れてしまっている。このお店は川沿いにあって、川面に映る照明の光がゆらゆらしてムードがあった。


見るまでは忘れていたが、1つ1つに思い出が残っていて、また行きたいなぁ~と遠い目をしてしまう。
小銭入れにはコインがいくつか入っていた。ユーロ圏の国々(ドイツ・ギリシャ・ポルトガルなど)の、心惹かれるデザインを取っておいたのだ。ポルトガルのものは、模様からお宝とか大航海時代が連想され、ワクワクする。
(これはレシートかな?何を取っておいたんだろう?)
折り畳まれた紙を財布から取り出したとき、私は目を見張った。
(お、お札じゃないですか!!!)
5、10、20、50ユーロが1枚ずつ。すっかり忘れていたヘソクリを見つけた気分。ちなみに、これは単純に取っておいたと思われるので、誰かに隠していたという類のものではない(独り身ですしね)。
日本円だと、現在のレートで1万円ちょっとなんですけど~。すぐに使えないし!
喜び一転、また財布にしまったのだった。
次回フランスに行ったら、使うことにしよう!

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