一目ぼれの装丁

友人の誕生日プレゼントを探しに、本屋へ出向いた。かつて見かけたデザイン本を贈りたいと思ってのことだった。その本は、ページを天のほうに立ち上げることができ、本を閉じたまま好きな画が描かれたページを見ることができる仕組みになっていた。ただ、その本を見かけたのがもう何年も前のことだったので、まだ扱っているかどうか分からなかった。

本屋に到着し、デザイン関連の棚をくまなく見て回ったが、私の探している本は見つからなかった。私の真横にやってきて、何やら整理しているようなていの若い女性店員さんに、こういった形状のデザイン本なのだけれど……と尋ねてみたが、
「題名などが分からないと探せない」
と素っ気ない返答だった。かなり年月が経過しているから仕方のないことだけれど、第一候補を贈れないとなって、私は意気消沈してしまった。
とはいえ、気持ちを切り替えて、何か別の素敵なものを見つけよう!
友人も猫好きなので、動物関連の棚を眺めてみる。『にゃんこ四字熟語辞典(飛鳥新社)』は私も持っていて、熟語に見合った猫たちの表情が面白おかしい。でも、もう持っているかもなぁ。岩合さんの写真集はどれを贈ってもハズレなしだろうけれど、こちらもすでに保持している可能性がある。
15分くらい色々な棚を行き来し、またデザイン本のところへ戻って来たとき、私は植物関連の棚に、ぷっくりと厚みがあり、ひときわ目を引く装丁が施された可愛らしい本を見つけた。
ちいさな手のひら事典 野に咲く草花(グラフィック社)』。天・地・小口がゴールド仕上げで、鮮やかなグリーンの表紙にはエーデルワイスのような白い花が一面に描かれ、2色の糸で編まれた花布が華やかさを増している。事典というだけあって、表紙中央の野花の絵は、植物学者が模写したようなタッチだった。
う~む、これは、飾っておくだけでも素敵!
私はこの装丁に一目ぼれしてしまった。
開いてみたところ、巻末に他のシリーズについての記載があり、『ねこ』と『子ねこ』があると判明した。すぐさま書店の検索端末で調べてみたが、どちらも在庫なし。
この野に咲く草花の装丁には大変心惹かれるけれど、これは私の好みだから、友人にはニャンコのほうが良さそうだ。彼女がより喜びそうなものを贈りたい!
そこで私は自宅に引き返し、友人用に『子ねこ』を、自分用に『フランスの食卓』をネットで注文した(野に咲く草花はいったん保留)。
誤算だったのは、ポスト投函かと思っていたら手渡しの配送で、私は仕事で不在だったため、再配達になってしまったことだ。明日、発送したかったんだよなぁ。これ、終業後の時間帯指定で自宅受け取りにしたら、発送は明後日になってしまう。それだと、誕生日に間に合わなくなるのでは?!と不安に駆られた私は、受け取り場所を会社近くの郵便局に変更し、昼休みに受け取って、仕事帰りに宅配の営業所に持ち込んだ。
実は本のほかにアロマグッズを贈ることにしていたのだが、事前に電子伝票を作成した際、‟航空便不可の商品”と表示され、私は再度オタオタする羽目に。
「これ、発送できなかったりしますか?」
と宅配営業所の女性に確認したところ、
「航空便ではないので大丈夫ですよ~」
と朗らかに答えてくれた。心配事が重なったけれど、無事、誕生日に遅れることなく友人の手元に届いたようなので、私はやっと安心できたのだった。

以前にこのサイト内、『ある日、子牛の革と胡桃の樹』で、パリの装丁工房に通った話を書いたけれど、最近になって、この教室で撮影した写真などが見つかった。制作した本とともに、作り方を教えてくれたマダムや生徒のドク(クリストファー・ロイドに似ている男性)と私が一緒に写っているものだった。思い出の中のドクはもっと強いパーマをかけていたと思っていたけれど、そうでもなかったことに気付かされた。また、制作した本を実家から取って来たので、こちらは改めて写真を撮り、それぞれ、『ある日、子牛の革と胡桃の樹』の章に掲載した。
そのため、こちらには今回購入した、フランスの食卓の写真を掲載。この事典シリーズはどれもクラシックな雰囲気で、フランスの食卓の表紙は、欧米などで使用されたレトロな壁紙を想像する。形状は、表紙・裏表紙・背がしっかりとしていて、重厚感がある。挿絵は、ポスターや絵葉書に使用されるようなイラストもあれば、新聞に載っているようなコミカルなもの、ボン・デシネ(フランスの漫画)風のものなど、見ていて飽きない。
シリーズを全部揃えてずらずらずら~っと並べたら、映えるだろうな。
そうなったら、本棚も見合ったものを用意しないと?!

左は、本の天部分。ゴールドが眩しい。花布が2色編み!(かつて自分が制作した本も、こういう風にしたかった……)中央は背表紙で、右は表紙。表紙のイラストは、レトロなポストカード風。

本の内容の一部。左の挿絵はポスターとかで使われていそう。右の挿絵はボン・デシネ風。

\ 最新情報をチェック /