今年のPaquesはいつ?
移動祝祭日のなかでも、Paques(パック:復活祭)ほど分かりにくいものはない。
‟春分の日以降に迎えた満月の後にくる最初の日曜日”という時点でややこしいのに、グレゴリオ暦を採用している西方教会(カトリック・プロテスタント)と、ユリウス暦を採用している東方教会(正教)で日程が異なるのだ。
キリスト教徒にとってパックはクリスマスと同様に重要なイベントであるようだ。この日は家族や親族と過ごすのが一般的らしく、当時ホームステイしていたRDP家でも、パリの大学に通う長女と次女が帰省した。フランスは西方教会の信者が多いため、グレゴリオ暦でパックの日程が定められている。宗派によって異なるのであれば、それぞれでお祝いすればいいじゃないかと思うのだが、パックの翌月曜日は祝日となるようで、揃えておかないと学校や会社の運営上都合が悪いのだろう。熱心な正教信者の人たちは、別の日程で祝っているのかも知れないけれど。
パックが近付くと、街中でも家庭でも、カラフルに色付けされた卵や、ウサギ・鶏・卵・魚・鐘などの形をしたチョコレートを目にするようになる。チョコの形にはそれぞれ意味があり、生命や繁栄を象徴するウサギ、復活のシンボルである卵とそれを産み落とす雌鶏、迫害時代キリストを意味する暗号として使用された魚、復活を知らせた鐘と言われている。この時期はスーパーやショコラトリーはもちろん、パティスリーやブーランジェリーでもさまざまなサイズのチョコレートがショーウィンドゥに飾られ、溶けたりしないかしらと気になったものだ。大きなものは家の中に飾ったり贈り物として、小さなものは子どもたちのために購入されることが多い。フランスでは、キリストの復活を知らせた鐘が卵を運んできたと言われており、パック当日、大人は小さなチョコを庭などに隠し、子どもたちはそれを探す。もともとは本当の卵を隠していたそうだが、チョコなどで代用されるようになったらしい。宝探しのワクワク感と、見つけた分だけもらえるという成果報酬制により、子どもは嬉々としてこのゲームに興じる。庭が広いお宅だったりすると、以前に探し出されなかったチョコレートが見つかったりすることもあるらしく、もう食べられなくなってしまっているものの、それはそれで面白かったりするようだ。
また、パックでは伝統的にラム肉が振舞われる。一説では、キリストが神の子羊(犠牲)となったことを忘れないためと言われている。RDP家は熱心な西方教会信者で、食事に関しても徹底していた。だから、キリストが磔に処された金曜日には絶対お肉を食べなかったし、パックの食卓にはラムが上っていた。
なお、宗教とは関係ないのかも知れないが、RDP家は夜もお肉を食さないという生活をしていた。平日は学校で、週末や休暇中は外出先などで食事を済ませていた私は、昼にRDP家のテーブルにつくことが滅多になかった。そのため、初めて一緒に日中の食卓を囲んだとき肉料理が提供されたので、ステイ開始からかなりの時間経過ののち、この事実に気付いたのだった。パックのle gigot d’agneau(ジゴダニョー:子羊のもも肉料理で、RDP家では骨なしのroti:ローストが出てきた)は、私が彼ら家族と同席した数少ないランチでの一品なのである。
今年のパックは3月31日。海外の行事で日本に浸透してきたものはいくつかあるけれど、パックはまだそこまでではない。私が暮らす界隈では、関連イベントなども特にはない様子。
先日立ち寄った英国展では、復活祭にちなんだ商品をいくつか扱っていて、ピーターラビット好きとしては見逃せない一品があったため、即購入(ピーターがモデルではないようですが)。フランスのパックのことを話していたくせに、イギリスのイースターで締めくくるの?と思われてしまいそうだが、一目惚れだったもので……。エリザベス二世が好きだったというチョコケーキも売られていたので、どんなものかと思い併せて買ってみた。見た目よりも生地はしっとりとしていたけれど、クランチビスケットが入っていて重量感たっぷり・チョコも甘め。女王はもっと軽くてさっぱりとしたテイストがお好みなのではというイメージがあったから、これはちょっと意外だった。英国展は終わってしまったけれど、イースターまでの間、バニーケーキ(そういう名前ではなかったけれど忘れてしまった)は店舗で扱っているそう。HERB STORY cafe
こういったパックにちなんだお菓子、特にチョコレートを紹介するということだけでも、日本国内でもっと浸透してくれると楽しそうなんだけどな。ヴァレンタインがあるし時期も近いから、チョコは無理か~。