お一人様のガレット・デ・ロワ
私がこのサイトを始めたのは2021年の1月。そして最初に扱ったスイーツの話題はガレット・デ・ロワだった。日本ではパイ生地タイプのものが主に出回っていて、南仏のブリオッシュタイプやその他地域のものを、私は見かけたことがない。一方、フランスではお目にかかったことのないガレット・デ・ロワが日本には存在する。それが、お一人様用である。
このお菓子は、かつては宴や後継者選びの場で、現代ではエピファニー(公現祭)のお祝いに集まった人々の間で振舞われる。また、中に入れられるフェーヴ(la feve:そら豆という意味で、もともとは本当のそら豆が入れられていた)が当たりくじのような役割を果たしていることもあり、フランスでは伝統的に複数人数向けのホールケーキとして作られている。特に宗教的な習慣がない家庭でも、家族や親戚・友人たちと一緒に食べることが多いので、一人用を作ることがないのだ。
日本では単身者への配慮なのか、‟自分へのご褒美”で購入する人が増えているせいなのか、ガレット・デ・ロワに限らず、お一人様向け商品が多数販売されている。聞いたところによると、フランス人は普段から自分が一番心地良いと感じる状態になるように日々過ごしているため、この‟自分へのご褒美”という感覚自体、理解に苦しむらしい。そんなこともあって、フランスでは一人用を見かけないのかも知れない。
理由はどうであれ、日本では今年もパティスリーやブーランジェリー、百貨店などにおいて、ガレット・デ・ロワのお一人様用が販売されているのを見かけた。今まで購入したことはないのだけれど、どうやら王冠飾りがついていて、フェーヴも入っている(もしくは中に入れずに添えられている)ようだ。それはそうか。それらがなかったら、普通のパイ菓子だもの。
そして先日、ミスタードーナツからもガレット・デ・ロワが登場した。GODIVAとのコラボ商品4種類のうちの1つだ。ミスドは近年1月~2月にかけ、有名ショコラティエなどとのコラボ商品を発売していて、その中にはパイ生地のものもあったけれど、ガレット・デ・ロワにしているのは初めてなのではないだろうか?
私がミスドのコラボ商品に興味を持ったのは、ピエール・エルメのものが発売された頃くらいからだったと思う。キャレマンショコラをドーナツに仕上げているということだったので買ってみようとお店へ出向いたら、長蛇の列だったので驚いたのを覚えている。
その後、何となく気になり始め、ピエール・マルコリーニやヴィタメール、トシ・ヨロイヅカに祇園辻利、ベイクなどとコラボしたチョコレートフレーバー商品を主に購入してみた。ドーナツに寄せているものもあれば、焼き菓子やケーキ寄りのものもあった。
今回のGODIVAは、ガレット・デ・ロワを除く3種の生地が、甘さを抑えたクラシックガトーショコラのようなしっかりとした焼き加減と、香りや甘味の強いホイップやクリームによって、見た目よりも更に重厚感があった。
ガレット・デ・ロワに関しては、さすがにフェーヴは入っていないだろうと勢いよくかぶりついたところ、ガツンと歯に当たる感触があり、「まさか?!」と覗いてみたところ、チョコレートの塊が入っていた。ひょっとして、そら豆の形をしていたとか?噛み切ってしまったため、確認できず……。
あとで気付いたのだが、王冠を模した飾りの内面に、「フェーブの代わりにチョコレートが入っています」と書かれていた。これ、確認してから食べた人っているのかしら?そして入っていたチョコレートの形までは記載されていないので、形は分からず……。
余談となるが、このサイト内『ある日、幼子を隠す』でラシェルからいただいたフェーヴの写真を載せ、‟パンやさんか機織り職人だろうか?女性っぽいけど、性別もイマイチ判別できず”と書いたけれど、ウィキペディアの記事の中で、いただいたものと同じフェーヴの写真が一例として載っていた。例になるくらいだから、きっと有名な職業なのではないかと思うのだけれど、説明書きはナシ。結局職業や性別は分からないままとなっている。
GODIVAとのコラボ商品は、2月の初旬くらいまで販売されるらしい(無くなり次第終了)。フランスでガレット・デ・ロワは、6日のエピファニー以外でも1月中は食べられているから、まだ口にしていない方でチョコレートがお好きな人は試してみるのもいいかと思う。その際は、私のように思いっきり頬張る前に、中に入ったチョコ塊の形を確認してみてください!