フランスで見つけた素敵なもの~ピック~
9月に入り、日を追うごとに朝と晩は涼やかな空気を感じるようになってきた。ショーウィンドウが早々と衣替えしてからここ数日までの間、こんな気温の日に秋物なんて視界に入っただけで暑苦しい、と感じていた。それが少しずつ体感と気分が同調するようになってきて、ちらほらと眺める余裕が出てきた。
服は見てるだけでも、食に関してはそうはいかない。日々、季節モノ商品の実物やニュースを目にしてしまうと、購買意欲がどうにもこうにも抑えられなくなるのを感じる。つい先日まで関西に出向く予定だったから、現地のスイーツ情報などをやたらと調べた結果、スマホの検索画面を開くと、知りたいけど知りたくなかった新しい情報がご丁寧にも自動で表示される。今となっては、ちょっとやそっとじゃ買いに行けないのよ~(泣)。
私の場合はスイーツに食指が動くのだけれど、きのこたけのこ(お菓子ではなく)・いもくりかぼちゃ(これも食材として)・さばさけさんま(これがスイーツになってたらかなり引いちゃう)などを楽しみにしている人にとっても、この時期はフットワークと財布の中身が軽くなりがちのはず。特に今年は自粛明けの再開をうたったお祭りがそこここで催されていて、規模も人出も膨らんでいるようだ。公園で子どもと一緒に遊んだり、まとまった人数でピクニックをする人なども見かけるようになり、笑顔や笑い声から解放感が伝わってくる。
今回は、行楽などで使用できそうなピックをご紹介。パリで独り暮らしをしていたとき、マレ地区で見つけたものだ。簡易的にしつらえられたものだけのステュディオは暗くて寒々しく(実際に凍えるほど寒かった)、心が荒みそうだった。散歩を兼ねて街中をブラブラしながら、なんとか心地よく過ごせるものはないかと気分が上がりそうなものを探して回っていたとき、目に留まった。確か、パン以外にもう1種類別のものがあったような?そちらも素敵で、どちらを買うかで悩んだような記憶がある(それなのに忘れちゃってる)。雛飾りの箪笥や重箱・掛盤膳をつまんで眺めていた幼い頃に戻ったかのような気持ちになった。ミニチュアってところがいいのかな~?でもこれ、日本だと寿司ネタみたいなものだよね?寿司ネタのミニチュアにはあまり惹かれないのだけれど……。
買って帰ったその日は、机の端に飾ってみた。いかにもフランス、まるでおのぼりさんだ、実際にそうだし、と、はしゃいだり自嘲気味になったりせわしないけれどちょっといい気分。早速使ってみたくなり、マルシェでチーズやオリーブ・ハムなどを買い込み、一口大にしたそれらに添えて、うむ、上等上等、と一人悦に入っていた。フランスの食生活で良いところは、キロ単位で金額が提示されていても、葉野菜をつまんだ分だけとか、ハム1枚だけとかで購入できるところだな~(ハムは塊をスライサーでカットしてくれるので、好きな厚さや枚数で注文できる)。パリではキッチンとバスルームが共有だったから、冷蔵庫を占領するようなまとめ買いはできなかった。日本のように、数や量が少ないと割高になるような仕組みでなくて本当に助かった!
ちなみに、別の日には一人用のフォンデュ鍋とかアヒージョ皿なども見つけたので、チーズをねっとりまとわせたバゲットやらオイルじゅわじゅわのエビやらにもこのピックを使用して満喫していた。サンドイッチを固定したときなど、ピック上のパンの部分だけが見えている状態もさまになったし、ピクルスとかカットフルーツとかつまむものが数種類あるとき、ピック立てに差したままテーブルに置いてある状態も見栄えがするので、テンションが上がった。かつて、雛飾りをいじくり回して壊してしまった経験がある身としては、飾っても使っても良しのミニチュアはおあつらえ向きだったのだろう。慣れない外国での生活は、人にもモノにも助けられていた日々だった。
最後に、マレ地区で見つけたものの中で、予想に反しガッカリした商品についても少し触れておきたい。シリコーン製の製氷皿が売られていて、その中に猫をかたどったものがあった。全身像で、ピンと立った耳やまるっとした背中。一皿に8体彫られていて、直径は1体3cmほど。型抜きクッキーとかで見かける容姿が、氷でも出てくるの?!と、理科の実験に臨む子どものような気持ちで水を張った。翌日、左右の端をねじるようにしてお皿に取り出したそれはただの釣鐘型で、猫らしさは皆無だった。これは作り方が悪かったのか?そう思ってパリでも日本に戻ってからも何回か試してみたが、いっこうに猫が現れることはなかった。どうすれば、猫になってくれたの?
フランス滞在中は、モノが少なくても充足感があった。現在、このピックはしばらく使っていない。飾るだけのオブジェにしてしまってはダメだよねぇ。
パリ留学から帰国したのちに勤めた会社の女性から、フランス旅行のお土産としていただいたバターナイフも同様だ。しばらく振りに使って、気分を上げていこうかな。