謝肉祭の食事

カトリック教徒が半数近くを占めるフランスでは、謝肉祭(カルナヴァル)期間中、大いに食べて飲んでお祝いすると言われています。ニースを訪れたときは、昼も夜も趣向を凝らした山車が街中を練り歩き、レストランやバーは満席・店の外まで溢れた人が夜遅くまでお祭り騒ぎを繰り広げていました。
私がインターンで滞在していた街は普段とあまり変わらなかったので、喧噪を気にすることなく落ち着いて過ごすことができましたが、逆に少し物足りなく思ったものです。その時期にホームステイしていたRDP家は、普段からお昼にしか肉を食さなかったのですが(夜のサラダやパスタにラードンが入ることはありましたが)、謝肉祭期間中でもその習慣が変わることはありませんでした。
私がこの習慣に気付いたのは、2月のある週末に家で食事をしたときのこと。お友達を招いての食事会に私も同席させてもらったのですが、その際、食卓に骨付きの鶏肉が並びました。
(あれっ、お肉なんて珍しいな……)
お客様だからかな?などと想像した直後にハッとしました。
(そういえば、私、RDP家でお肉食べるの初めてかも?)
やっぱり謝肉祭だからかな、この家族は敬虔なクリスチャンだからなぁ、と勝手に感心しながら、隣の席の三女に
「カルナヴァル中はお肉も食べるの?」
と聞いたところ、
「え?お昼だからだよ」
との返答。そうですか……。お昼は食べるのね~。
平日昼間は学校で過ごし、週末は同僚のお宅にお邪魔したりしていたので、ほどんど日中を家で過ごしたことがなかったとはいえ、ホームステイ3か月目。我ながら、気付くのが遅いのですが(笑)。
その後、他のカトリックの方に聞いたところ、謝肉祭期間中は普段よりも食事を楽しみ、その後の四旬節(断食期間)は質素に過ごしているようです。断食といってもまったく食べないわけではなく、3食のうち1食はきっちり食事をし、他の2食は簡単に済ませる、とのこと。RDP家は、謝肉祭期間中も昼以外の食事を控え目にしていたので、普段から四旬節のような生活だったようです。
と言っても、フランスでは朝食をたくさん食べる家庭は少ないので、RDP家と一般家庭との違いは、夜しっかり食べるか食べないかだけかも知れませんが……。

そして、カルナヴァル最終日。マルディ・グラと呼ばれるこの日によく食べられるお菓子、ベニエ。
RDP家で天ぷらを作った際、家族から「ベニエだ!」と言われたので、衣を付けて焼いたもののことかと思っていたのですが、パン屋さんやお菓子屋さんで売られていたそのお菓子にも「ベニエ」の名称が。
どうやら、生地を揚げたお菓子のこともベニエと呼ばれ、粉モノを揚げた料理全般に使われているようです。ちなみに、フレンチフライなど素材を直接油で揚げたもののことは「フリット」と呼ばれています。私が見たお菓子のベニエは、地方によって呼称が変わるようで、「ビューニュ」「オレイエット」「メルヴェイユ」などと呼ばれているようです。小麦粉に砂糖や卵・バターなどを入れて混ぜた生地をクリスピータイプのピザ生地よりも更に薄くのばし、長方形にカットして油で揚げ、粉砂糖を振りかけたものでしたが、形状や生地が異なるタイプもあるようです。
私は一度も食べませんでしたが、マルディ・グラだけでなく、カルナヴァル期間中はいつでも食べられるようです(ひょっとしたら一年中食べられるのかも)。学校の同僚であるラシェルの娘・ベリンはこのお菓子が好きらしく、3人で一緒に出掛けたとき、ラシェルが買ってあげていました。ラシェルは料理上手で、私にもよくフランスの郷土料理やお菓子を振舞ってくれたし、何でも自宅で作っていました。そんな彼女が「いつもはダメだけど、今日は特別」と言ってベニエを買っているあたり、やはり、謝肉祭期間中は普段よりもちょっと贅沢をしても良いという意識が根付いているからかも知れません。
5枚1パックで売られていたベニエを、大事に1枚ずつ食べていたベリン。当時小学生だった彼女が今は20代となり、他国の大学へ進学し、もうすぐ社会人になります。コロナの影響でお祭り騒ぎはできないだろうけど、他国でも違う呼称のベニエを食べることができていたらいいね。

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