自分を励まそう!
5年ほど前から更年期かな?と思う症状があり、それなりの年頃だからプレ更年期でしょう、とできるだけ気にしないようにしてきた。ところが、ここ数週間で「絶対そうじゃない?!」と確信する事態に陥っている。
身体が熱い。カイロを貼ったみたいに、触るとポカポカしている。額にはじんわりと汗までかいている。重ね着のせいかな、と一枚羽織るのをやめたらゾクゾクする。うまく調節できないのだ。
初めて更年期を意識したとき、変わったと感じたのは身体ではなく心の方だった。ちょっとしたことでイライラして、態度にも出てしまう。周囲の人に自分のイヤな面を晒したことに落ち込み、その気分が長引く。仕事を変えたりして、心の変調は少し落ち着いたように感じていたのだが、身体にも来たか!
インターンを終えてフランスから戻ったあと、あるバスケットボールチームの練習を見学したとき、監督の男性が
「自分の機嫌は自分で取れ」
と選手におっしゃっていた。
更年期を意識するより前、40代になって最近イライラすることが多くなったんじゃないかと感じ始めた頃、ふとこの言葉を思い出し、自分に言い聞かせるようにしていた。気分屋なんて、冗談じゃない!この状態が定着でもしたら、と考えただけで身震いした。数年は何とかやり過ごしてきたが、そののち、言い聞かせるだけではいよいよ整わなくなり、更年期を言い訳にすることにした(そう思わないと立ち直れない……)。
今では、感情が荒ぶりそうだと感じたら、「はいはい、更年期ですからね~」とひとまず自分を落ち着かせ、そのあと「自分の機嫌は自分で取るよ~」と心の中で唱えている。
この言葉を監督からお伺いするより前、フランスで似たようなことわざを耳にしたことがあった。
「On n’est jamais mieux servi que par soi-meme(オン ネ ジャメ ミュー セルヴィ ク パー ソワメーム):誰かにお世話してもらうより、自分自身でやった方がいい」
要するに、「自分の面倒は自分で見る」ということ。フランス語で意思疎通がうまくできず、一人では解決できないことがあり、外国じゃ知り合いもいないしなぁなどと半ば諦めていたときに聞いたように思う。当時は、孤独感や疎外感を感じたときなど、強がりというか自分を鼓舞するためにこのことわざを思い出していた。監督がおっしゃっていたことと同じ意味合いだが、イライラを感じたときにはこのフレーズを思い出さなかった。感情にも行動にも責任を持つ、大人なら当たり前と思われていることであるにも関わらず、言葉にされるまで意識も実行もできていないものだなぁと気付かされた。
前述のことわざ以外にも、フランスではそのとき感じていることにリンクした言葉を投げかけられたり見聞きしたりしてきた。
移民問題に関するレビューでは
「Il faut de tout pour faire un monde(イル フォ ドゥ トゥ プール フェール アン モンド):世界を作るためには全てが必要である」
つまり、世界を構成しているのはさまざまな要素であり、異なる人種・思想・宗教であっても全てが必要なものだ、ということで、この言葉が目に留まったのは疎外感を感じていたときだった。
また、留学時代に
「あの子は自分のことを話さないから、一緒にいてもつまらないわね」
などと陰口を叩かれたりした際、
「Mieux vaut etre seul que mal accompagne(ミュー ヴォ エートル スル ク マラコンパーニェ) :悪人を伴うより一人の方がいい」
と私の耳元でささやいたフランス人女性。
こんな人とつるむなら一人の方がマシよ、と嫌悪感を顔に出し、ヤダヤダと首を振る仕草をしたから、私も思わず笑ってしまった。
「日本人は控え目なんだよね」
と言ってもらって、ずいぶんと気持ちが和んだのだった。
言葉には力がある。
喫茶店で流れていた曲、何気なく手にした本、友達との他愛のない会話などから、突然はっとさせられたりじんわりと響いてくる一言。気分がモヤモヤしたときには、そういった言葉を思い出して、自分自身を励ましたいものだ。
さて、今の私の状態は?
「Avoir la peche(アヴォワール ラ ペッシュ):元気いっぱい」
といったところでしょうか(強がりですね……)。
自分に暗示をかけて、更年期を乗り切るぞ~!