猫話~寅年は猫年~
来週はもう新年。卯年を迎える。
猫好きにとって、寅年は猫年。それもあと1週間、次回は12年後になってしまうので、残り僅かな猫年を最後まで満喫することにした。
実家には、ハナ・メグ・サスケ・ブランという4匹のニャンズがいた。そのうちブラン以外の3匹は、私にはもう少し後になるであろう世界へと旅立って行った。
ハナはハチワレ、メグはアメショとミケのミックス、サスケはツキノワグマのように胸元の一部だけが白い黒猫、ブランはその名の通り白猫で、ハナとサスケが男の子、メグとブランが女の子である(ブランは女子名であれば本当はブランシュなのだが、呼びにくいのでブランと命名した)。ちなみに、メグとサスケは従姉弟である。
それぞれの子たちの詳しい話は、また別の機会にさせていただければと思う。
12年前も24年前も、年賀状には我が家のニャンズをモデルに起用したように思う。2022年はそうしなかったので、今更ながら猫年万歳!と写真を眺めながら物思いにふけっているのである。
猫がいるご家庭の冬の風物詩といえば、暖を取れる場所に集まる姿ではないだろうか。ストーブの前、ホットカーペットの上、こたつの中、お風呂場の蓋の上。保温中の炊飯器や、使用後のプリンター・CDプレーヤーの上などにも器用に丸まっていて、
「そんなところにも……」
と感心させられたものだ。米袋ほどの重量がある我が家の猫にたびたび乗られたそれらの家電は、耐重量を上回る重さに負け、早い段階で使えなくなってしまったのだけれど。
また、ポジション争いも日常茶飯事だった。実家では人用に暖房器具を用意しても、全て猫様が占領してしまい、お譲りする羽目になっていた。ホットカーペットで足元を温めようとすると、ニャンズがそそくさと幅をきかせてしまう。それなら、と電気ストーブを点けると、ストーブに一番近いホットカーペット上にわらわらと移動してくる。結局、電気ストーブも猫の方に向け、仕方なくエアコンのスイッチを入れたりしていた(うちのニャンズはエアコンの風があまり好きではないようだったので、着こむなどして寒さに耐えたこともある)。サスケなどは電気ストーブの真ん前に身体をくっつけて座り込むものだから、ときどき毛が焦げる臭いがした。
「大丈夫?ちょっと離れたら?」
と心配になってストーブから離し、身体を確認するのだが、サスケは平然としたもので、何でもないことのようにまた近づいて行っては、毛をチリチリさせていた。
ブランがやって来る前、3匹は三つ巴の状態だった。メグはハナによくくっついていたし、サスケはメグの機嫌を損ねないように立ち回っていたし、ハナはサスケが多少大きく出るような態度で臨んでもそれを許容していた。
あるとき、ハナの耳から異臭がしたので、母が病院へ連れて行った。先生曰く、
「どうやらおせっかいな猫がいるようですね」
とのことで、メグがハナの毛づくろいをする際、耳の中まで舐め回したことが原因だったようだ。そこで、メグがハナの毛づくろいをするときには様子を窺い、耳を舐めようとしたら止めるようにしていた。メグは
「お兄ちゃんの毛づくろいは私の役目なのに、何で止めるのよ!」
といった感じで耳をイカにしていたが、暫くしたらハナの耳舐めは諦めてくれるようになった。
メグが寝ているところにサスケが入るとき、まるでコマ送りのようなスローな動きに、私たち家族は笑いが止まらなかった。寝ているメグを起こさないように、1mmずつしゃがんでるんじゃないかと思うような動作。それなのに、運悪くメグが起きてしまったなら、
「シャーッ!」
という威嚇と同時に猫パンチが正確にサスケの眉間を捉える。スイカの出来を見分ける際に指で弾いたときのような音が響き、サスケがのぞけるのを目にすると、
「あんなに気を遣っていたのにねぇ……」
と少し不憫に思ったものだ。
だからブランがニャンズに加わったとき、年齢的にも差があったので、この均衡が崩れるんじゃないかと心配していた。ブランは他の3匹と違い、家ではなく人(母)につく猫のようだ。母には甘えるけれど、他の家族には常に強気な態度で、私はいまだに噛まれたり引っ掻かれたりすることがある。先住の3匹にもどーんとぶつかっていくような感じだったので、最初のうち、他の子は威嚇したり距離を取ったりしていた。そんな関係を、ハナがいいお兄さんとなってみんなをまとめてくれたので、大きな問題は起こらなかった。また、三つ巴のときよりも2対2で寝たりじゃれたりできるので、バランスが良かったのかも知れない。ペアの割合は、ハナとメグ、サスケとブランというのが多かったのではないかと思う。ハナの側にはみんなが寄って行っていたので、ときどきこのペアが変わることもあった。メグはブランが近づくと威嚇したりしていたが、来客があったときは揃ってテレビの後ろに隠れていた。そんなときは決まって、メグの背にブランが重なるようにして隠れているので、メグにとっては二重苦だったんじゃないだろうか。そんなメグも、ハナとサスケが一足先に旅立ったのち、ブランとの距離を縮めたように思う。
写真家の岩合光昭さんは、“ネコは小さなライオンだ。ライオンは大きなネコだ。”とおっしゃっている。トラもそうだ。我が家だけでなくそこここにいる小さなトラたち、今年もありがとう。12年後の大きな猫年まで、小さなトラたちとの思い出を増やしていきたい。