ルブランからのメッセージ
先月末、アルセーヌ・ルパンの原作者であるモーリス・ルブランの原稿が見つかったというような記事を携帯ニュースでちらっと見かけた。充電切れになりそうだったことから、その場では詳細を確認しなかった。歴史的発見に関するニュースだから、テレビなどでも大々的に報じられるだろうと数日気に掛けていたのだが、目にも耳にも全く情報が入ってこない。おかしいな~、見落としちゃったかな?と検索してみたところ、未寄稿作品ではなく、『バルタザールのとっぴな生活』のタイプ原稿や、日本の読者に宛てたルブランからのメッセージなどだったことが分かった。
共同通信(https://nordot.app/1013943265388232704)
誰も読んだことのない原稿が見つかったというような話ではなかったから、大きくは取り沙汰されなかったのだろう。でも、GWも近いから、急遽展覧会が催されるかも知れない。そんなことを考えて数週間、その気配は微塵もない。この話題に色めき立ったのって、一部のルパンファンだけ?!(まあ、予定されているとしても、さすがにGWは気が早いでしょう……)
個人的には、期間限定でも良いので一般公開して頂けると有難い。画像で見る限りでも保存状態が良いし、このルブランの筆跡は読みやすい!私は過去に幾度となく、フランス人の筆跡で判読できない書類・手紙・FAXを受け取ってきた。その都度、ああ、私はまだフランスにもフランス語にも馴染んでいないのね、と思うようにしてきたが、やっぱり、読みやすいって大事だわ~!せっかく受け取っても、読めないとガッカリ&モヤモヤするし、何より返答に困る!
こんなにも読みやすいのだからちょっと頑張ってみようと、画像からルブランのメッセージを訳してみることにした。ところどころ読み取れなかったり、私が文法的に違う単語を当てはめているであろう部分や意訳している箇所(太字)はご容赦を。
Arsene Lupin!Je ne me permettrais pas de faire l’eloge des livres que j’ai caracterise a l’existence de cet illustre aventurier.
Mais n’ai je pas le droit de dire,fasse qu’il y ait la moindre pretention le ma part,combien j’eprouve de sympathie pour le personnage meme qui a bien voulu m’honneur de son amitie et de ses confidences?Quelle joie quand il arrive chez moi a l’improviste et qu’il s’ecrie en riant:‟mon cher,j’ai du nouveau a vous raconter!”Sa vie l’amuse tellement!Il deborde toujours d’une telle gaiete!
C’est un grand plaisir pour moi de voir comme il a ete compris et apprecie pour ce public si intelligent et si cultive du Japon!
Maurice Leblanc
20 juillet 1931
アルセーヌ・リュパン!私はこの著名な冒険家の存在を特徴づけた本を自画自賛するつもりはない。
しかし権利はなくとも、彼の友情や打ち明け話において彼の名誉がいかに重要であるかだけでなく、登場人物としてどれほど私が好感を感じたか、私の役割をもって最低限の主張をしても(良いのではないか)?彼が嬉しそうに「親愛なる友、僕は君に語るべき新しい話があるんだ!」と不意に我が家を尋ねてきたとき、何とワクワクしたことか。彼の人生は本当に面白い!彼はそんな風に陽気でいつも大忙しなのだ!
聡明で文化的な日本の読者に彼のことが理解され、認められたことは、私にとって大きな喜びである。
モーリス・ルブラン
1931年7月20日
いちファンとして、日本の読者に宛てたメッセージをルブランが遺してくれたこと、それが見つかったことが嬉しい。
『バルタザールのとっぴな生活』については、なぜルパン全集に含まれているのか、当初理解できなかった。バルタザールがルパンであると解釈する方もいるようだし、発表されたのがルパンシリーズの合間であったため、ルパンの物語に繋がるストーリーとする説もある。私は小学生の頃に読んだきりなので、今だとまた違った捉え方になるかも知れないが、当時はバルタザールをルパンだとは思えなかったし、話が繋がっているようにも感じられなかった。
今回、ルブランのメッセージと共に『バルタザールのとっぴな生活』のタイプ原稿が見つかったと知り、バルタザールとルパンに繋がるものがあるのかも、と確かめてみたくなった。かつて読んでいた本は過去の火災で焼失してしまっているので、全集を買うか借りて、改めて読み返してみたいと思う。