フランス手話でご挨拶3~相手のことを尋ねる~
昨年は喪中で、普段年始のご挨拶を差し上げている皆さんへはその旨連絡していた。そのため、当然ながら今年は年賀状を受け取っていない。地味に寂しい。ポストを開けたとき、見慣れた手書きの字体でも印刷されたものでも、手紙だと分かるものが入っていたら、ほわんと嬉しくなる。今年はDMやチラシだけだったから、冬の寒さとも相まって心にも隙間風が入り込んできた。
フランスの友人たちとは、3年前まで年末年始に手紙のやり取りがあった。コロナ禍・そしてウクライナ情勢など、ヨーロッパへの郵便事情が思わしくなくなったため、今年も仕方なくメールで近況を尋ねた。ラシェルの娘ベリンは社会人となり、ベルギーで仕事を始めたとのことだった。彼女は確か英語に興味を持っていて、カナダの大学に進学したようだったので、英語圏で仕事をするかと思っていた。彼女が仕事で何語を使用しているかは確認していないが、フランス語圏だったらバイリンガルあるいはトリリンガルで働いているのかも知れない。まだ小学生だったベリンが外国で働くようになったのか、と感慨深い。
遥か彼方から届いた手紙をドキドキしながら開封し、字体からそれを綴った相手を想像しつつ、紙のデザインや触感・香りなども確かめながら、五感でじっくりと内容を味わう。メールの画面ではそういったことができないけれど、相手の現状が分かるとやはり嬉しいものだ。
日本では手紙を出す習慣が薄れつつあり、フランスでもそれは大差ないようだ。年を重ねると、少しずつお互いの生活環境に変化が起こり、会う回数や連絡が減ってきたりする。SNSで気軽に近況を尋ねたりすれば良いのだろうが、手軽であるためかえって後回しにしがちだ。どうしているかな、と気に掛けてはいるものの、すぐに連絡しないものだから段々と疎遠になる。私の場合、年齢的にご家族がいる友人が多いので、お子さんが小さいから忙しいかなぁなどと、自分の不精を遠慮という名目に置き換え、年賀状のやり取りだけになった人もいる。
手紙でもメールでもなく、対面で相手に何か尋ねようと思ったとき、その相手がフランス手話を使用する人だったら?うまく通じるか分からないけれど、相手のことを知りたい。そんなことを思った方に、すぐ使えそうな手話をご紹介。質問する際は、問いかけるような視線を相手に向けることもお忘れなく。
<初対面の場合>
「Enchante(e):初めまして、よろしく」
(『フランス手話でご挨拶1~自己紹介~』のところでご紹介していますが、おさらいということで)
手指を全てくっつけた状態の掌を口元(微笑んでいると良い)に当て、顔の前方に掌を動かします。
「Vous vous appelez(Tu t’appelles)comment?:あなたのお名前は何ですか?」
人差し指で相手の胸の辺りを差し(あなた)、両手をフランス手話アルファベットU(ピースサインの人差し指と中指をくっつけた状態)の形にし、小指を下にして右手指(上)と左手指(下)を×のようにクロスさせ、右手指を2回チョンチョンと左手指の上で叩き(お名前は)、両手をパーの状態にして掌が向かい合うように内側に向け、手首を軸に両手を上下に動かします(何ですか)。
「Vous etes(Tu es)quel pays?:あなたはどこの国の人ですか?」
人差し指で相手の胸の辺りを差し(あなた)、グーにした手の甲を下にして、親指・人差し指の順に開き(どこの)、両手をOKを表すときのような形(親指と人差し指を丸くくっつけ他の3本は立てた状態)にし、その両手で円を描くように、胸の中央から左右に広げまた中央に戻します(国)。
<何度か会っている場合>
「Ca va?:元気?」
両手をフランス手話アルファベットU(ピースサインの人差し指と中指をくっつけた状態)の形にし、掌を自分の方へ向けた状態で人差し指と中指を軽く曲げます。
「Ta famille va bien?:ご家族は元気ですか?」
人差し指で相手の胸の辺りを差し(あなた)、両手をパーの状態で掌は自分側・指は下に向け、中央に向かって円を描くように動かします。中央に動かす際、パーの状態から指を全部くっつけて“ 「 ”のような形にします(家族)。最後にグーにした右手の親指だけを立てた状態(いいね!を表すときのような形)にします(元気)。
「Quoi de neuf?:何か変わったことは?」
両手をパーの状態で手の甲を下にして左右に振り(何か)、軽く開いたパーの状態の左手を小指が下になるようにして掌を自分の方に向け、掌を自分の方に向けたグーの状態の右手を身体と左手の間から上へ突き上げ、左手からのぞかせるときにはパーの状態にします(変わったこと)。
ちなみに、「Rien de neuf:特に何もない」は、グーにした右手の親指だけを立てた状態(いいね!を表すときのような形)で顎を1回撫で(何もない)、掌を自分の方に向けたグーの状態の右手を身体と左手の間から上へ突き上げ、左手からのぞかせるときにはパーの状態にします(変わったこと)。
ここへきて、エッセイ本の宣伝ですか?と言われてしまいそうだが、あしからず。
対面での尋ね方をご紹介したけれど、会うことができなくても、相手とやり取りしたいと思ったらすぐ行動に移せるようにしていきたいな。今年は新年の近況を聞けていない分、周囲の人とは時期を見て連絡を取ってみようと思う(「時期を見て」とか不精なことを言っていたらダメですね……)。