フランス手話でご挨拶1~自己紹介~
JR国立駅中央改札を出ると、北口方面にあるスターバックスのサイニングストアに目が留まる。看板には、STARBACKSの文字の下にそれぞれに該当する手話が描かれている。手話はフランスのものをかじった程度の私でも、アメリカ手話で描かれたアルファベットを読むことができる(TとKの表現は違ったけど)。アメリカ手話はフランス手話を基礎にしているそうなので、私でも解読可能だったのだろうが、アルファベット以外の表現は両国で異なるらしい。同じ英語圏のイギリスはアルファベットでさえも全く違う(アメリカは片手・イギリスは両手で表す)から、手話の世界では英語が世界共通語とはならないようだ。
ニコに言わせると、「手話での会話は国が違っても何となく分かる」とのことだったが、日本とフランスの“こんにちは”で既に大きな違いを感じた私としては、甚だ疑問だった。言葉が通じない国で、“食べる”とか“寝る”といった単語がボディランゲージで通じることはあっても、会話を理解するって難しいのでは?フランス手話の「bientot:間もなく」は、スタバのサイニングストアでアーモンドミルクカスタムを注文するときと同じような動作だよ?フランスでこの動きをしても、注文できないのでは……。
フランスにはスタバのサイニングストアがないようなので、こういったことは起きないだろうけれど、国によって表現が異なる手話。かつて私は、手話で表現する単語は世界共通かと思っていた。世界共通手話がないとなると、海外旅行とか大変だなぁと思ったけれど、ニコはヨーロッパの他国やアジアへも渡航歴があるから、やっぱり「手話での会話は国が違っても何となく分かる」のだろうか。
検証できないので、もしどなたかがフランスで、もしくはフランス人と手話で会話をすることになった場合に備え(?)、フランス手話での自己紹介方法を。
まずは「Bonjour:こんにちは」。「Enchante(e):初めまして、よろしく」も同じ動作なので、初対面の人にも使えます。
手指を全てくっつけた状態の掌を口元(微笑んでいると良い)に当て、顔の前方に掌を動かします。投げキッスのような動作ですが、決して唇をちゅ~のように尖らせてはいけません!ウインクも禁止。愛の国フランス、すぐ誤解されます。
次に、「Je m’appelle~:私は~です」。
人差し指で自分の胸を差し(Je)、両手をフランス手話アルファベットU(ピースサインの人差し指と中指をくっつけた状態)の形にし、小指を下にして右手指(上)と左手指(下)を×のようにクロスさせ、右手指を2回チョンチョンと左手指の上で叩きます(m’appelle)。そのあと、自分の名前のアルファベットを示します。
最後に、「Je suis Japonais(e):私は日本人です」。
私(Je)は同上。そののち、両手をくちばしのような形(小指を下にし、人差し指から小指をくっつけ、親指と他の指を<>の形にする)にして、左手を左斜め上、右手を右斜め下へくちばしを閉じるようにすぼめながら動かします(Japonais)。すぼめて動かす際、日本列島の形を表現するように、やや曲線を描くようにします。
そしてこれはオマケ。「J’habite a Tokyo:私は東京に住んでいます」。
私(Je)は同上。そののち、両掌を相手に見せ(パーの状態)、親指とそれ以外の指で物を掴むように、両手指を同時に前方へすぼめます。先ほどのくちばしをすぼめるときのような動作で、相手から見ると指がお辞儀をしたような状態です(habite)。すぼめていた両手を開いて、親指以外をくっつけたパー(左手の人差し指から親指のラインが“し”に見えるような形、右手は“逆し”の形)にした上で、両掌を相手に見せ頭上に2回突き上げます(Tokyo)。東京はネオンが光っているというイメージが表現されているとのこと。ネオンギラギラの都市って、東京以外にもある気がしますが?
ちなみに京都は、親指以外をくっつけたパーの状態で両手甲を相手に見せ、地面に向かって2回振り下げます。Tokyo⇔Kyotoで、東京を逆さにすると京都だから、とのこと……。
日本の都市を表現したフランス手話で私が教わったのは東京と京都だけですが、habiteの動作ののち、アルファベットで都市名を示せば居住地についても紹介できます。
学んでいたりしない限り、手話に接する機会はほとんどない。世界的に見ても、サイニングストアはまだまだ少数だ。こういった店舗が世界中どこの街にもでき、日常的に手話に接する機会も増えたとしたら、世界共通手話が確立されるかも知れない。