オリンピック開幕
26日金曜深夜、枕横の携帯に手を伸ばす。1時50分。良かった、始まる前に起きられた。身体を起こし、テレビを点ける。パリ・オリンピック開会式を観るためだ。
時差の関係で放映が深夜に及ぶような催しを最初からLIVEで観るのは久し振りだ。いつもは開始時間にさほど頓着せず、適当に起きていつの間にか寝落ちしているか、最初から録画を当てにしてLIVE時間には寝入っているのだが、今回の開会式は屋外・しかもパリ市内とあって、街中の様子が気になって仕方がなかった。
私は目覚ましをかけないので、開始時刻に起きられるか不安だった。だから携帯の時刻表示が放映10分前だったことにホッとしたのだが、開会式はまだ30分ほど後になると分かり、もう少し寝られた……と二度寝してしまいそうになった。
ここで横になってはいけない!舟を漕ぐ身体をその都度起こしながら、何とか30分耐えた。
聖火の最終ランナーについて話題に上るたび、私はジダンだったらいいなと期待していた。でも、革命記念日にアンリがパリで聖火リレーを行う姿を見て、代表歴や年齢が近いから、ひょっとしたらジダンは出ないのかも、と思い始めた。
予想に反してジダンが現れたときは嬉しかったし、聖火ストーリーの登場人物となったために彼の姿を他の聖火ランナーより長い尺で観ることができたのは、ファンとして有難かった。
3人の子どもたちを乗せるボートと漕ぎ手は、オペラ座の怪人を連想させた。
折々で俯瞰のパリが映し出され、本当に美しい街だなぁと、液晶越しに何枚も写真を撮ってしまった。
見事な装飾が施されたオーステルリッツ橋で上がったトリコロールカラーの花火は、色の区切りの境目がはっきりしていたので、すごい、きちんと分かれてる!とワクワクした。
ノートルダム大聖堂の復旧作業が進んでいるようだったので、この様子だと予定通りの時期に完成するかも知れないな、そうなれば生きているうちにまた観光できるな、などと終活スケジュールを考えるかのような気持ちで眺めてしまった。
首を切られた女性の格好をした人が歌ったり、血しぶきに染まったかのようなコンシェルジュリーでの演出は、マリー・アントワネットをはじめ断頭台にかけられた人々が収監されていた歴史を思い起こさせた。
国立図書館は壮麗。本を読まずにずっと見入ってしまいそう。
空中に張られたロープが映し出されたときは、ナタン・ポランさんが出てくるのかと思ったけれど、予想外れだった(恐らく、サーカスなどの軽業師の方々なのだろう)。
アヤ・ナカムラさんという方(そう紹介されていたけれど、ナカムラは芸名で、本名はダニオコーさんといい、フランスとマリの二重国籍を持っているが、日本人との血縁関係はないらしい)を私は存じ上げなかったけれど、さすが移民大国というか、今大会のテーマの1つが多様性だからか、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちを起用し、‟広く開かれた大会”を印象づけようとしているようだった。
銀の甲冑に白馬の女性(断定はされていなかったけれど、女性のようだった)がオリンピック旗を手渡すシーンは、オルレアンの解放で旗を掲げたジャンヌ・ダルクを彷彿とさせた。
それにしても、すっきりしない天候になってしまったのは非常に残念!晴れていたらもっともっとクリアに式の様子を観られたはずだし、選手が風邪をひいたりしないかとか、演者が踊りにくそうだ、などと考えてしまった。
そしていよいよ大詰めとなり、最終聖火ランナーは誰?というところで、ジダン再登場!アンカーではなかったものの、今までのオリンピックで複数回トーチを握った人はいなかったのでは?フランスでのジズーの愛されぶりが計り知れる演出だった。
開会式の数時間前、私と電話で話した母は、
「私も起きて観るわ!」
と言っていたけれど、途中で寝落ちしてしまったそうだ。朝になって再度母から連絡があり、
「LIVEは観られなかったから、今、他局の録画を観ている」
と聞き、私も点けてみたところ、けっこうバッサリと削られていた。可愛そうだけれどちょっと可笑しかったのは、パリ五輪組織委員会会長であるトニー・エスタンゲ氏のスピーチがごっそり省かれていたこと。LIVEで聞いたとき、例えであることは分かったものの、オリンピックの話というよりは恋愛話を聞いているようで、個人的にはしっくりこなかった(たぶん、彼が私の苦手なイケメンだったからかも知れない)。録画では放映されなかったから、愛の国フランスでは受け入れられても、日本の局の編集の人は私と同じような感覚だったのかな~と思ったのだけれど、ネットニュースなどでの日本人の反応は‟素敵なスピーチ”、‟話は長いけどイケメン”等々、好意的だった様子。世界205の国と地域ではどのように捉えられたのか、ちらっと気になっているところである。
今夜から本格的に始まるパリオリンピック。歴史的建造物を使用するという点にも興味が尽きない。開会式だけでなく、夜中に起き出す機会が増えるかも知れない。そのときは、放映開始時間ではなく、競技開始時間をきちんと調べ、タイミングよく見られるようにしよう!