この切手がステキ!~消印からの想像~
先週、『BBQ、やってます』の中でウィーン在住のマーティンからのメール内容について話をしたが、最新の近況では、先週、友人宅のwhirlpool dehorsで泳いだと書かれていた。whirlpoolとは何ぞや?と調べてみたところ、渦巻を表す英語で、渦流を出す浴槽などを指すこともあるようだ。最初はジャグジーのことかと思ったけれど、それだとwhirlpool spaと言うようだ。ちなみに、whirlpool bathだとジェットバスのことらしい。マーティンがnager:泳ぐという単語を使っていたこともあり、彼が言っているのは恐らく、室外渦流プールとでも言うべきものなのだろう。って文字にしてみた私の頭の中では、小学生の頃、水泳の時間に生徒全員でプール内を同じ方向に回って渦を作り、流れるプール状態にしたことが思い出された。
全くの別物だと分かってはいるのだけれど、自宅に渦を巻くプールがあるということがどうもうまくイメージできない。
やっぱり、ジャグジーのことなのかな?
それにしても、『ある日、エアコンなし・プールありの不思議』で触れたような先入観(プール付きの家に住む人=一部の富裕層)は、今回のマーティンのご友人に関しては、あながち間違いではないのでは?と改めて感じてしまった次第である。
マーティンとフランス語でやり取りをしようと約束した当初から、手段はメールを想定していた。私は長く続ける自信があったけれど、まさか24年間ほぼ毎週メールを送受信するとは予想だにしていなかった。そんなマメなマーティンではあるけれど、彼から手紙をもらったのは数回だけだ。それも、私が送ったもの(クリスマスカードとか、一緒に撮影した写真など)への返事だったので、自発的に送られてきたのは1回くらいだったように思う。日本と同様に、ヨーロッパでもカードや封書で近況をやり取りすることが少なくなっているようだった。
一方、インターン期間に知り合った友人たちとは、コロナ前まで手紙のやり取りがあった。頻繁ではなくなっていたけれど、クリスマス時期には必ずカードが届いていた。特にラシェルは、私が切手に興味を持っていることを知っていたので、必ず記念切手を貼って送ってくれていた。
コロナは明けたものの、ロシアとウクライナの戦闘が継続し、パレスチナ情勢が不安定であることなどから、ヨーロッパへの郵便物が確実に届く保証がない状況なので、彼らとの手紙のやり取りが途絶えている。ここ数年は、年始にメールを送る程度で、数人からは返信がないこともある。何て書いてあるのか全然解読できず、これはメールのほうがいいかな……などと思ったこともあるミシェルの筆跡ですら、今はただ懐かしく、恋しい。
※下左:コロナ以前に届いていた手紙の一部。
下右:同じく、コロナ以前に届いていた手紙の一部。フィンランドのサンタ村からの手紙は、レイコさんが手配してくださった。レイコさんとは一度もお会いしたことがないけれど、私が小学生の頃からやり取りしている。
10cm×15cm程のカードや封書で届けられるものは、単なる近況だけではない。
カードや便せんやインクを見繕い、文章をしたため、その時期に発売されている記念切手を選びに郵便局へと足を運ぶ。
受け取る相手のことを思って送り出された手紙。それが手元に届いたとき、自分のために費やされたそれらの時間と労力が無意識のうちに感じられ、心が震える。
文章を読むときは、筆跡から相手を思い出し、書かれた内容からどんな風に過ごしているかを想像する。インクの色や便せんのデザインから相手の気分を推し量ったり、文章の長短や筆圧・文字の勢いや流れなどから日々の生活に思いを馳せたりする。
手紙が届くことによって、相手が自分のそばに来てくれたように感じられる。そんな気分に浸れることが、手紙の醍醐味なのではないだろうか。
私はヨーロッパの切手市で、使用済のものをいくつか購入した。日本だと、未使用・新品が主に売買されているようだけれど、ヨーロッパでは消印が押された切手にも一定数の需要がある。カテゴリーごと(動物・植物・建築物・乗り物など)に分け、まとめていくら、と値がついているもの。かつて誰かが誰かに送った封書から、手紙を抜き取った状態で売られている封筒。初日カバーなどはデザイン性も高いので、切手の価値はそこまで高くなくても収集するコレクターがいる。かく言う私も、素敵だなと思ったものをいくつか購入した。
消印が50年以上前のものもあったりするので、このとき何があったのだろう、誰が誰を思って手紙を書いていたのだろう、などと想像すると、頭の中で架空の物語があれこれと巡ってきてワクワクする。
※下の写真は、切手市で購入した封筒。1988年、ムッシュー・アラン・トゥレック宛にアルゼンチンから発送されたもの。封筒の中には、切手解説書と思われる紙が入っていた。
※初日カバー。
写真左上:1973年にストラスブールで発行されたもの。
写真左下:1973年にオシェルで発行されたもの。
写真右上:1975年にディジョンで発行されたもの。
写真右下:1975年にナントで発行されたもの。
※同じく初日カバー。
左上:1981年にドイツのボンで発行されたもの。
左下:1982年にコローニュ・ラ・ルージュで発行されたもの。
右2つ:1985年にパリで発行されたもの。
※初日カバーのクリスマスバージョン。
上が1981年発行で、下が1983年発行。
メールだと、この感覚は味わえないからなぁ。
1日も早くヨーロッパが安定して、手紙のやり取りも再開できますように。