この切手がステキ!~サッカーW杯~

今月20日に開幕するサッカーW杯カタール大会。日本代表メンバーが発表され、今回は誰が活躍するだろう、どこまで勝ち進めるだろうと高揚してくる。

日本がW杯に初出場した1998年、私は新卒で旅行会社に入社した。同業他社同様、その会社でも大会観戦ツアーが企画されていて、開催国がフランスということもあり、私は雑用でも何でもするから添乗したいと思っていた。そのため、新人研修の際、今後の抱負について聞かれたときも
「W杯に添乗してサッカーボールの形をした切手を買いたいです」
などと言ってしまったものだから、周囲からは変わったヤツだと思われたらしい。
中長期的な計画性のかけらもない発言をした社員にはそのような大役は与えてもらえず(いずれにしても、新人は添乗要員から除外されていたようだ)、その役目は私の直属の上司が担うことになっていた。
ツアー催行が決定し、参加されるお客様へのご案内書類を用意し始めた頃、上司から代理店に出向いて観戦チケットを受け取ってくるよう指示を受けた。うわ~、会社の誰よりも先にチケットを拝めるのね!と二つ返事で引き受け、いそいそと向かった。だが、私の心中など知るはずもない代理店の担当者は、
「まだ届いていないので、改めてご連絡します」
とあっさり水を差した。
当時のことを覚えていらっしゃる方は、「ああ、あのときは……」と見当がつくだろう。
そう、W杯のチケット問題だ。
購入済みのチケットが大量に不足し、日本のみならず世界規模での問題に発展した。原因は販売コンサルタントの空売りにあったと言われている。そんなことが起きているとはつゆ知らず、また、これが大問題に発展するなど予想だにしていなかった私は、
「フランス人のやることだから、そんなにきっちりしてないよね~」
などとお気楽に捉えていた(問題は別のところにあったのに、フランス人に対し失礼なことを思ってしまい、済みませんでした)。
問題は解決しないまま、上司はツアーに出発。現地到着後も何枚かのチケットが足りない状況に加え(有難いことに、試合までにはお客様全員分のチケットを確保できたらしい)、代表のユニフォームが入ったお客様の荷物がロストバゲージに遭ったようで、帰国後に対面した上司は誰の目から見ても分かるくらいにやつれていた。
「ツアー中ずっとピリピリした空気だったんだけど、試合前日に川平慈英さんが登場したら(このツアーは“川平慈英さんと行く観戦ツアー”だった)場が和んで、俺も少しほっとした。川平さん、握手するとき『よぉろしくぅ~!』って手を出してきて、TVで見るのと同じテンションだったよ」
「試合当日、数千円のチケットに数十万の値がついていて、でも試合開始数十分で、そのチケットが路上に捨てられてたんだよね」
「行方不明だった荷物もさ、代表のユニフォームを着て応援したい!ってお客様が言うから、一緒にギリギリまで待ってたんだよね。で、1つが運よく届いたから、良かったですね!って喜んだのも束の間、開けてみたらユニフォームが入ってない方の荷物だったみたいで、結局お客様はユニフォームを着られなかったんだ」
自分が楽しむ余裕なんて全然なかったよ、とツアーでの様子を話してくれた上司は、そんな状況にあったのに、お土産にアンジェリーナのチョコレートを買ってきてくれていた。
研修のときの浮かれた発言を反省するとともに、添乗中は何が起こるか分からないなか、冷静かつ臨機応変に対応しないといけないんだな、と気が引き締まる思いがしたものだ。でも私は国内旅行の代理店営業担当で、所属部署の社員が添乗するのは稀だったらしく、その後私は海外どころか国内も添乗することはなかったのだけれど。

当時の私が買いたいと思っていたサッカーボールの形をした切手がこちら。パリの切手市で手に入れた。シートもあったので併せて購入。躍動感のあるデザインや色使いがとってもステキ!

おまけは、インターン期間中に購入したFIFA100周年の記念切手。左がフランス版で、右がモナコ版。モナコでは、2001年のバロンドールに選出されたフィーゴの切手も買った。フランスからはジダンやアンリ、トレゼゲにリザラズが選ばれていたようだけど、なぜ彼らのは買わず、フィーゴのを買ったんだろう?覚えていない……。

Follow me!

ある日の話

前の記事

ある日、戦いと糧と