ある日、引越し一苦労~フランス編~
今週はこのサイトの記事を更新できないかも、と思っていたけれど、やっぱり少しでも書こう。今は気分転換(現実逃避)が必要なのである。
月末、引越しを控えているのだが、部屋の中がしっちゃかめっちゃかなので気が重いのだ。よくこれだけのモノが1Rの部屋に収納されていたな、と我ながら感心するくらい、あんなものやこんなものが散乱している。
今回の引越しを検討するにあたり、最初に見積りを依頼した業者さんから、
「箱はいくつくらいになりますか?」
と尋ねられ、
「そうですね……。50箱くらい?」
と答えたら、電話口の男性はしばし無言ののち、
「1Rに2人暮らしだったんですか?」
と問い直してきた。
荷物多すぎなんだよ、という本音を失礼にならないようにやんわりと言い換えてくれたようだ。気を遣わせてゴメンね。
で、一人暮らしの平均的な箱数は15~20箱ということだったので、私はその箱数内に収める荷物を選別している最中なのである。数年前に引越したとき、そんなに少なかったっけ?
この引越しの経過報告は次週(いらん!と言われそうですが)。
フランスでは、合計5回引越しを経験したことになる。とは言っても、帰国のための片付けを含めているのだけれど。
日本とフランスの引越しで大きく異なっていたのは、家具の移動の有無だ。あちらの一般的な一人暮らしは家具付きのステュディオなので、退去のとき、家具の心配をしなくていいのは助かる。ただ、洗濯機があるステュディオは稀なので、こまめに洗濯したい人にとっては不便だ。また、テレビがないことも多い。私の場合、フランスで初めて独り暮らしをしたステュディオが両方備わっている部屋だったので、レアケースだったと言える。
洗濯機やテレビはないのに、他の家財(先述の2つの方が生活に必要だと思える)が備わっている場合もある。使用しないと幅だけ取っている置物と同じなので、使ってみるか、という気にもなるのだが、それには注意が必要だ。
大きな本棚が用意されていたステュディオでは、ここに装丁の美しい本が並んでいたら見ごたえがありそうだ、などという考えが浮かんだ。でもここで本など購入してしまったら、次への移転の際、絶対自分が大変な思いをすることになるのだからと思い直し、ガランとさせたままで過ごした。食器棚があった部屋で暮らしたときは、ついついお皿やグラスなどに目が向いてしまったが、割れ物はかさばるし、送るときに割られちゃうかも知れないし、とやはり買わずにおいた。
フランスでは、発送物に壊れやすいものが入っている場合、‟fragile(繊細な)”と注意書きしておくのだが、フランス人はお構いなくバンバン置いたり投げたりする。私が郵便局からfragile荷物を送ろうとしたときも、対応した男性が、記入されている内容を確認したにも関わらず、その場で後ろに投げ置いたことがあり、
「ちょっと!」
とすかさず抗議したのだが、全然悪びれる様子はなかった。それ以来、持ち歩けるのであれば自分で運んだ方が無難かも知れないと考えた私は、普段なら送ってしまうものまで移動先へ運んだことがある。
半年で3回留学校を変えたときは、月を経るごとに教材などの紙モノが増えていった。それらはさすがに重いので、次の留学先の住居宛に送っていた。
「段ボールの封をしたら、それを更に紙で包むといいわ。そうすれば、悪さをされにくくなるから」
ホームステイ先のマダム・ローラはそう言って、クラフト紙を用意してくれた。また、包むのが大変なくらい大きな段ボールの場合は、手では切れない透明なテープで3重くらいに封するといい、とも教わった。クラフトテープやガムテープだと、開けられて中身を盗られてしまうことがまあまあ発生しているようで、発送物の盗難防止を考慮したアドバイスだった。
丁寧で安心・安全な日本の輸送機関に慣れていると、それが他国の普通ではないことに気付かされる。
ちなみに、フランス人は小型の発送物だったら郵便局で売られている黄色の箱(サイズがいくつかある)を使用することが多いようだ。たま~にフランスの友人たちから荷物が届くと、この黄色い箱に透明もしくは茶色のテープ(こちらも手では切れない)で封がされているので、ローラのアドバイスを思い出すのである。
1年間インターンをしていたときは、帰国の際、それなりにモノが増えていて困った。日本から持ち込んだ本や教材、書道具、浴衣、将棋盤や駒などは全て学校に差し上げてきた。それらを減らしても、生活をしていく中で増えていった諸々をどうにかしなくてはならなかった。有難いことに、暮らしていた街の近郊には陶器で有名な地域があり、街中でも大きな壺などを扱っていて、がっしりと丈夫な段ボール(マジックショーで人が飛び出す箱くらいの大きさのもの)を簡単に手に入れることができた。そして中身を詰め込んだあとは、かつてローラから受けたアドバイスの通り、手で切れない透明なテープでグルグルと3重に封をしたのだった。
箱に収めたあとで苦労したのは、店舗への持ち込みだった。車や台車のない私は、空のスーツケースの上に箱を乗せ、手で支えながらフラフラと郵便局まで運んだ。途中、何度も落としそうになり、その都度立ち止まっていたため、普段なら5分程度で着くところ、20分近くかかった。更に、帰国が8月だったので、みっともないくらい汗だくな姿で郵便局の窓口に並ぶ羽目になった。
こういうとき、車を運転できる誰かに頼めたらいいのだけれど、教員仲間もニコも夏休みで不在。それに、私はこういうお願いごとがちょっと苦手。だから、自分が入りそうなくらい大きな段ボールを3つ、それぞれ一人でえっちらおっちらと郵便局まで運んだのである。
さあ、また引越し準備に取り掛からなくては!
はあぁぁぁ……。