花時雨のアフタヌーンティー
時候の挨拶程度でなかなか会えていなかったYさんと、数年振りに再会した。
彼女はかつての職場の同僚で、かれこれ25年ほどのお付き合いとなる。今回待ち合わせ場所に現れたYさんは、私の知る限り今までで一番髪を短くしていて、とても似合っていた。
雪が降ったと思ったらここ数日は夏日。寒いよりは暑いほうがマシかな、と天気予報を気にしながら過ごすこと1週間。昨日は前日から10℃以上気温が下がって冬に逆戻り、しかも、雨天ときたもんだ。Yさんはイギリス好きだけれど、なにも再会の日に、ロンドンのような気候になることないじゃないか!恨めしや、気圧配置……。
お天気は残念だったけれど、数年分の積もり積もった話が一斉に溶けた私たちは、ランチ場所で2時間、ティーハウスで2時間、お互いの近況を語り合った。
訪れたティーハウスは、長年続いたフレンチレストランがコロナ禍で閉店したあとに入ったお店である。レストラン時代は何度か足を運んだことがあり、洒落た洋館に品のある日本人オーナーマダムの雰囲気がぴったりと溶け込んでいて、自分まで華族にでもなったかのような優雅な気分にさせられたものだ。ティーハウスに移行してからは、1階のショップには立ち寄ったことがあったが、2階で食事をいただくのは初めて。規模こそ違えど、イギリスのマナーハウスのような洋館はインスタ映えするだろうし、ヌン活ブームもあるのだろう。こんな天候でも、ショップには所狭しと人が溢れていたし、食事も予約で満席になっていた。レストランのときより店内がこぢんまりと感じるのは、人口密度のせいだろうか?デシャップ(キッチンとホールの間にある配膳カウンター)ってあったっけ?
席に着いてから、店員さんが私たちの好みや苦手なものについての確認と、提供する紅茶に関する説明をしてくれた。ティーフリーなので、私は気になる紅茶を各自が注文するものだと思っていたのだが、こちらのお店では、店員さんがおすすめをランダムにサーブしてくれる形態だった。確かに、紙に書かれた紅茶の種類は191種類もあったから、一人ずつの注文を受けていたら仕事が回らないだろう。
私たちは店員さんが紅茶名を告げて注いでくれるとき、名前が書かれた紙にチェックを入れていたのだが、これだけ種類が多いと名前を探すのも一苦労だった。あとで見返してみたら、ホット12種類、アイス1種類、炭酸割りのアイス1種類を提供してもらっていた。自分が選ぶと同じようなものばかりになってしまいそうだけれど、こんな風におすすめをサーブしてもらうと、飲んだことのなかったフレーバーの美味しさが分かったり、それぞれ個性があって面白いと感じたりすることができる。私の中で一番印象に残ったのは、‟アメリカンティー”という紅茶。香りも味も色もアメリカンコーヒーみたいで、これは紅茶なのだと分かっていても、コーヒーを飲んでいる感覚だった。私たちは食事のあと、今回提供された紅茶のうちいくつかを、ショップで購入したのだった。
ティーハウスを出るときも、まだ雨が降っていた。
花時雨のアフタヌーンティー。それはそれで趣があるけれど、やっぱり晴れて欲しかったなぁ。これが催花雨となって、入学式の頃、満開の桜が見られますように。
Yさんと私も、次回は蒼穹のアフタヌーンティーで再会したいものである。
※下の写真は、Yさんからいただいた焼き菓子と、ティーハウスで購入した紅茶‟南フランスの香り”。Yさんはフランス好きの私のために、ご自宅近くのフレンチパティスリーのものをプレゼントしてくれた。どれもと~っても美味!!!とりわけ、ウィークエンドシトロンは1本でも食べられそうな美味しさだった。紅茶はチョコレート・マロン・ピーチアプリコットをブレンドしているそう。チョコやマロンはまさに私好みだけれど、紅茶のフレーバーではあまり選んだことがなかった。今回はネーミングにも惹かれたので、お持ち帰り。イギリスっぽいイメージのあるカップ&ソーサ―(でもこれはフランスで購入した)でアフタヌーンティーの余韻を……。


